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超密集地帯

4、〜外出も一苦労〜(後編)

それにしても、暑い季節になった。

「ふぅふぅ、昔から、こうだったかなぁ」

ずりずりとたるんだ体を引きずりながら歩く肉塊竜たち。
視界は狭くなるわ、基本的に体は密着するわで、こんな日差しの良い天気ではけっこう辛い。

「すまんが、アイスキャンディを2本・・・いや5本貰おうか」

露店のアイスキャンディーを貰う。ソーダ味と、レモンスカッシュ味。うむ、さっぱりして少しの間暑さを誤魔化してくれる。

「おや?」

あっという間に5本を食べ終える。アイスが無くなった途端、けだるい暑さが再び全身を包んでくる気がした。
これは、ジェラートも頼んでおくべきか。いや、しかし暑いからといってこうも食べ歩きしていては…

だが氷菓のカロリーはそう高くないし、散歩するだけで運動になる、大丈夫だな。

「よし、追加を頼もう」
「あいよっ!」

そして渡されるバケツ大の容器に入ったジェラート。カラフルなシロップがたっぷりかかっており、練乳まで市販の缶を1つまるまる使い切った量がかけられている。
うーん、余計なカロリーが…

だが一口食べて、ひんやりとした触感、そして甘みが口内に広がるとそんな事はすぐ気にしなくなる。

「うむ、うまいっ」

笑顔になり、ヒョイパクヒョイパク、頭がキーンとするほどの勢いで特盛ジェラートを食べ尽す。

だが調子に乗って冷たいものを食べ過ぎてしまったようだ、今度は体が少し冷えてきた。
どこか喫茶店で温かいココアでも飲むか、いやカレーというのもいいだろうか。

迷ったときはどうすればいいのか、後悔しないように両方を食べてしまえばいいのだ。それがここの竜たちの基本であり常識で。
ワシも例に漏れなくなくその選択をするのだった。

当然、店に入ったらそれ1品の注文で終わるはずもない。
喫茶店ではココアのほかにピスタチオナッツ入りのチョコレート洋菓子、モンブラン(800gもある)、チーズスフレを満喫し

カレー専門店では、ビーフ、ポーク、チキン、お肉盛り合わせセットがオススメになってたので、それを超特盛で3回もお代わりしてしまった。

おかしいな、気分転換に外に出たのだが…食べ歩きばかりな気がする。
以前は、もっと映画を見たり、様々な体験ツアーに参加していたのだが・・・

「どっこいしょ・・・」

こんな掛け声を言いながらベンチに座るのは年を感じてしまい、少し悲しさを覚え…

「って、ぬぉおお?!(ベキバキバキ、ズシィイイン・・・!」

20t制限のかかってるベンチ、大丈夫だろうと全体重を乗せたが見事に尻餅をついてしまう。


これは相当ショックだった。妻や息子、フラーさんとは違い、自分はまだ1桁だろうと、思って・・・たのだが。

すぐさま修理メカが来てベンチをあっという間に補修する。恥ずかしい。周囲の視線が気になる。
実際は誰も気にしてないのだが、ワシは逃げるようにしてその場から立ち去ろうとして…

前のめりに倒れ、そのままゴロンと転がってしまう。
遠心力が付き、そのままぐるぐる・・・とはいかないが、2,3回転し、ドッシィイイン!と土埃を巻き起こす勢いで派手に倒れ伏した。

よたよたと、不器用に起き上がる。

やはり、腹ベルトぐらいは装着しておくべきだなぁ。

「もう、そんなものに頼る段階か・・・とほほ」

ベルトを取り扱う、いわば巨デブ竜御用達の店。
そこの中は予想通り、重度肉塊竜や、かろうじて竜としての原形をとどめているワシみたいな、だが決して痩せてはいない者がちらほらいた。

みな陣術やサポートメカに頼っており、試着も店員や自分がどうこうするわけでもなく、機械任せだ。

腹ベルトとは、ズボンを押さえつけるための物ではなく、重力に負けて垂れ下がる特大の巨腹を支えてやる代物だ。

巨乳の女性が肩が凝るように、巨腹の竜もあちこちが疲労しやすい。
その軽減にも役立つし、背筋も伸び(丸い肉厚な背中が伸びるはずもないのだが)歩行の際もだいぶ楽になる。

ちなみにコープたちはすでにそんな代物に頼る事さえできない。

腹がたるんで地面に接してるどころではないからだ。


そこで大きめのサイズのベルトを購入し、サポートメカにつけてもらい、ベルトの有用性に感動すら覚えた。

「おお、これは動きやすいぞ」

恥ずかしがらずにもっと早くに使うべきだったかな。




だがその5日後には・・・ダグラスは1ランク上のベルトを購入する羽目になるのだった。


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