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超密集地帯

8、〜短期超肥大〜

〜常時空腹の一日〜




ぐぐぅうう!!ぐきゅるるる〜〜!!

「ん、ぁー・・・?」


聞きなれた音が頭に響く。相撲部部長のシュメルツは、のっそりと上半身を起こそうとして、苦笑する。
以前の癖が抜けてねーなぁ。

今のオレは 起き上がれない ってのに。

「なんでもいいから、とりあえずメシ」

自分の頭の上に浮かぶサポートメカに頼む。
了承しました、なんて気の利いた返事は無いが、静かにプログラムを起動させた機器が部屋に置いてあるインスタントのカップ麺や、トースト
オール電化のキッチンを作動させて炒飯やスクランブルエッグ、次々と休みなく作っていく。

待っていることなど出来ないので、その間に業務サイズのコンソメ味ポテチを食べる、というか食べさせて貰う。

「バリボリ、バリボリ・・・うぷっ」

昨日喰った夜食がまだ腹に残ってる感じがする。

「アスタゼリンドリンクは、っと」

アスターゼ草の成分を濃縮し抽出した栄養ドリンク。消化促進剤でもあり、食欲増進剤でもある。

「ぐび、ぐび・・・ぷはぁっ」

普通の竜なら、300ml飲めばいいようなドリンクをがっつり1リットル飲み干す。

「ふぃ〜眠気が消えてきたら、どんどん腹が減ってきちまった。おーい、まだかー?」

準備が追いついていないのだろうか。シュメルツは”2台目”のサポートメカにも指示を出した。

ミルクとショコラたっぷりのミックスシェイクをゴブゴブと一気飲み。これだけで7000キロカロリーあるが、何の足しにもならない。

ぶよぶよとした四肢を癖で動かすが、彼は自分では何かを持って飲み食いしていない。
あくまで手持無沙汰なので少し動いてるだけで、あとは全部サポートメカに任せた被・介護生活さながら。

「あーあー、また太っちまったかなぁ」

ベクタ大陸に住む自分たちの両親。自分の親ながら太り過ぎだろうと思っていたが、だんだんその体型に近づきつつある。

「やっぱ親子だもんなぁ、似るのはしょうがねぇよなぁ〜むっしゃむっしゃ」

大量のピザを、息を吸い込むように平らげていく。10枚、11枚、12枚、13枚…

どう考えても遺伝的要因は無く、ただの食べ過ぎによる太り過ぎだが、軽い気持ちでシュメルツは2台のサポートメカをフル活用していく。

「もうしばらく部活に出れてねぇなぁ、そろそろ学校の改築終わるといいんだけど・・・うぷっ」

食べ続けながら、全身を複数のアームがついたタイプのサポートメカにもみほぐしてもらう。血行が良くなり、また全身に刺激が伝わると余計に食欲が湧いてくる。

ぐぐっぐぐぅううーーーー!!

「まだ腹四分ってとこか〜」

そう言いながら、焼トウモロコシをムシャムシャ、続いて作り置きのおでんセットを丸ごとペロリ。





「ぐぇぷっ、結構食った気がするけど、まだまだいけそうだな〜 」

朝食はもう2時間近く経っていた。 このままでは食べる時間だけで、昼食前のおやつに移行してしまう。

まぁそれもいいか、とシュメルツは宙に浮かぶコントロールパネルを操作し始める。




床一面が、彼自身の贅肉だった。 腕や脚は体の、腹肉(なのだろうか、判別できない)に呑み込まれそうだし、
首と胸のたるんだ肉は境目が何段もあるせいで、どこが境界線かわからない。

尻尾は尻尾としての機能を果たしておらず、ただ行き場をなくした脂肪を分割し、ギリギリつける量をまわしているだけの箇所に過ぎない。


普通にしゃべったり呼吸がスムーズに出来ているのも、サポートメカが自動で陣術を展開し快適な環境を生み出しているから。

そうでなければ今頃汗だくで乱れた息で助けも呼べず、一歩も歩けず、そんな状況に陥っているかもしれない。

ベクタ本国でもシュメルツ級の超・重度肉塊竜はやまほどいるが

今ここにいる彼らは収穫祭によって短期間に激太りを果たした竜たち、極端な体重増加に体が追いついていないのだ。


「にしても、前よりどんぐらい増えたんだ・・・?うちにある測量系じゃ、100t以上は計測できねぇしな〜
そういえばナイルさんって150t超えたとかなんとかって、すげーよなー」

まぁ、自分はそこまでじゃなく110tぐらいだろう(?) シュメルツはそう思い、ちっと痩せないと部活は厳しいよなぁ


なんて苦笑いしながら、特性トマトとチキンのスープを鍋ごと飲み干すのだった。
















〜未確認飛行物体、あらわる?〜





「フゥッ、フゥウッ、ウプッ・・・!!!」

かつて体育を指導する立場にあった教師は困惑していた。

抗えない程強力で凶悪な強化型の食欲…"貪食欲”に。

どれだけ食っても、腹がパンクしそうなほど膨らんでも、体重がみるみる増えても、目に見えて脂肪が、贅肉が蓄えられても、

太り続けていると頭はわかっていても、体が容赦なく食糧を、胃袋に詰める事を催促する。

無意識に背中や頭をかくぐらい自然に、気がつけば食べ物に手を伸ばし・・・というか伸ばさなくても、サポートメカたちが食べさせてくれていた。


「あなた、大丈夫・・・?」
「ハァハァハァ・・・あ、ああ、だいじょ・・・ううぷう!!」

ギュウ、ギュギュ・・・と音が漏れそうなほど、パンパンに膨らみきったワグナス=アバロンのお腹。

もちろん水や空気で膨れてるわけではない。持ち前の皮下脂肪と内臓脂肪、それに少々の食べ過ぎた朝食の影響だ。

必要以上に食べたくないという強い意志、それが逆効果となり、ストレスとなり…結果からいうと余計に彼の体を太らせた。

逞しい四肢はパツパツに張りつめているように見えるが、触るとやはりぶよぶよとしており

顎や頬も首を回せない程につきまくってしまっている。

彼のいったいどこを、どうやって見れば体育を指導する立場の竜に見えるのだろう。

休校中なのは幸か不幸か。満足に動けぬ今の彼が授業をすることは厳しいだろう。

体重は”78t”にまで膨れ上がっていたが、(ちなみに妻は90tオーバーである)

実際の数値ほど太くは見えない。男性の骨格や筋肉の重さに、ぎっちりとつまったお肉もあるだろう。

それでも隠し切れない程立派過ぎる胴体は太くて太くて・・・とりあえず太かった。

短期急速成長型肥満を果たした彼は、いくら鍛え抜かれた肉体をもってしても体を支えるのは無理だった。

3つのサポートメカがトライアングルのように周囲に浮かび、反重力空間を形成、超低重力の中でワグナスは活動していた。

先ほどから強すぎる空腹(飢餓にも等しい)に負けてはデカ盛り、大食いメニューの出前を頼んでは食い、頼んでは飲み

体型維持調整ベルトを”今日も”でっぷりしたお腹でぶっちりとはち切らせていた。


妻のダンターグはある意味開き直っているし、肉塊竜としての生活も慣れているので、ごく自然に過ごしている。
とはいえやっぱり食べる量は多く、何かワールドレコードにでも挑戦しているのかと思いたくなるような極盛りの蕎麦を(上に載ってる具の量からして5kg以上あり、おかしい)平然と食べている。





そんな彼の移動方法は現在、もっぱらサポート機器任せのフロート移動だ。

これほど膨れた胴体では満足に歩行が出来ず、傾斜がある道ではゴロゴロと漫画のように転がる事もあった。

その時の目立ちようと言ったら今でも思い出すだけで顔が赤くなる。
ワグナスのような肥り方をする竜はあまりいないため、近所では名物のようになっていた。


一番ショックだったのは、小さな子供に竜として認識されなかったこと。

丸い気球に手足が生えた物体がふよふよと浮かんでいた事と、こちらの顔が見えなかったこともあり、

凄く珍しいものを見たという反応をされてしまった。(それこそUFOやUMAでも発見したように)


その日の帰宅時には、もう、絶対これ以上太ってたまるか・・・と心に誓った。はずなのに。

用意された一人用満漢全席フルコースをぺろりと平らげてしまい、後悔する暇もなく次々と食欲が湧いてくる日々を過ごしていた。



「うぅ、もっと食べたい・・・」

妻のライフスタイルが羨ましい。

休校をいいことに外出せず家でゴロゴロ、体型を私ほど気にしていないから我慢もしない。

サポートメカの音声入力アナウンスで、ダンターグの昨日の食事量を聞いてみる。

「ちなみに、昨日妻はどれぐらい食べていたのかな?」

「確認中…情報整理中…完了…
ハイ、ダンターグ=アバロン様が昨日お食べになった料理の数は、113品目となっております」

淡々と語る自動生成の機械音声。ひゃ、ひゃくじゅうさん品だって?
なんという量だ…

私の自室にきたら窓や扉から脇腹の肉が溢れるほど太ってしまっているだけはある…私などは60品目程度になるよう抑えているのに。


もちろん、彼らの一品はディナーの前菜で、サラダが少量…という単位ではない。

ベーコンツナサラダのサンドイッチ3段重ね+コーンポタージュ&フライドポテト3XL、低(2000kcal)カロリーサイダーのセット、程度でようやく一品扱いされる。




「あなた〜〜ごめんなさぁい、ちょっときてぇえ〜〜〜」

間延びした声が妻の自室から響く。 やれやれ、今度は何があったのだろう。先日はサポートメカの重量制限を一時的に超過して床が突き抜けたりしていたが…


「ふぅ、ふぅう、どうしたんだ?」

”横”幅が8mもある廊下を進み、彼女の部屋へ。この程度ならサポートメカは3台中2台オフにして、自力で歩行していく。
一歩ごとにぐらぐらと家が揺れている気がするが、きっと気のせいだ。

「今日、久々にアクセサリ―ショップに行こうと思ってたんだけど、オシャレしようにも、どれもつけれないのよぉ」

上着は全滅なのはもちろん、確かに小物ですら怪しい。
・・・あ、私が去年贈ったネックレス、もうダメだなこれ・・・。

腕に巻くバンドも論外だし、ミサンガなんて流行ってたが付ける前から千切れるだろうなぁ。

「陣術で着替えしようと思ったんだけど、機器に設定してなかったのよぉ・・・」

「はぁ、だから自力である程度は動けるよう節制しろと言っていただろうに」
「だ、だってぇ」

ムスッとほっぺたを膨らませ…るまでもなく膨れてるけども! ダンターグは上目づかいで角に小さなリボンをつけて欲しいとおねだりする。

そもそも外出なんて出来るのか今の状態で…という言葉を飲み込み、仕方ないなぁと収納箱に手を伸ばす…が届かないのでサポートメカを遠隔操作し取り出した。


取ったリボンを手に持ち、彼女に近寄ろうとしたが…

ぶにゅっ、と互いの贅肉が三途の川さながらにふたりを分け隔ててしまう。

「ぬっ、くっ、むぐぅ!」

ぼよっ、ぼよぉん!! と、巨大なゴムボール腹がバウンドするだけで全く彼女に近づけない。

わずか5,6回の接近でしかも凄い疲労がたまり始めた。

「ぜぇ、ぜぇっ・・・ふ、太り過ぎじゃないかお前・・・?」
「って、私のせいだけじゃないでしょ!」

う・・・確かに…。
というか、仮に彼女が私と同じレベルの体型でも…否、くびれるほど痩せていたとしても、たぶんとどか・・・ない・・・

「なっ」


その事実に気づいた時、私は愕然とした。 そこまで… それほどに太ってしまっているのか?!今の私は??!!


「あなたーどうしたのー?ねぇってば〜」

妻の声が右から左へ流れていく。 忘れかけていた、体型の事…
すっかりマヒしていた。食べ過ぎ、飲み過ぎ、太り過ぎな現状。

妻や同僚、周囲の竜たちがことごとく太っていることを言い訳に、私自身はそれ程でもないだろう…と…

「思いこもうとしていたのか…」






相撲の押し出し宜しく、彼女をなんとか外に出して見送った後、私は自室で呆然としていた。

埃の被ったトレーニング機器の数々。 ダンベルは持ち上げようにも、かがんで手に取ることも出来ないし、
ランニングルームマシンは、この腹では足場以外を完全に飲み込んでしまうだろう。

「というか、待てよ…」


私は久々に”走ろう”としてみた。 そして、無理だと気づいた。

走る際の最低条件、両脚を宙に浮かせる…ジャンプらしき行為は出来た。だが、それ以上は無理。


部屋が狭く少し動いただけで尻尾や腹がどこかにぶつかるのもある。

しかし一番の原因は…衰えだった。様々な応用の利く陣術、そして複数のサポートメカに頼りきりの生活。

私の肉体と精神はとことんまで堕落していた。そもそも体が”疲れたくない”とすぐ訴えてくる。
ちょっと動いただけで空腹をこれでもかと刺激し続け、その猛攻は気力でどうにかなるレベルではない。

気付くと山ほどのポテチの空袋が20Lゴミ袋に詰め込まれていた(無意識にポテチだけで何キロ分食べたのだ・・・?)

ハッとして周囲を見渡すとそればかりか、ピザの空はこは山積みだわ、焼き鳥かフランクフルトか覚えてすらいない物の串が大量に捨てられている。


「ぐふぅっぷ!!」

・・・?

いつの間にこんなに私のお腹は膨れて・・・?

体型に絶望したばかりだというのに、我に返るとすでに不必要なほどの栄養を蓄えている。


「お腹空いたなぁ…」


ぽつりと、無意識にそう呟いてしまう。

理想の自分は、好物も我慢してなんとか体型を維持している。だが現実の彼は、耐えきれずに食べ物に手を伸ばし腹を膨らまし続けている。

満腹になるほど食べた場合でも、彼の心は満たされないせいでズレが生じてしまうのだ。



アスターゼ草の食欲促進成分を過剰に取り込んだ際、起きやすい症状だが
彼の場合、様々な要素が重なってこのような結果になっていた。

これ以上太るわけにはいかない、だから食べ過ぎるわけにはいかない。

だが体は求め続ける、足りないと、飢えを、渇きを癒して欲しい…と。起きていながら、半ば寝ている…半覚醒の状態で大半の間食をしていた。


「ジャンバラヤも数日に一回と控えているんだがなぁ…」

あのスパイスの効いた辛味、鼻腔をツンと刺激して食欲を掻き立ててくれる料理。
パラパラの焼き飯に、じゅわぁと肉汁があふれ出るほど分厚いベーコンやウィンナー。

色とりどりの野菜の歯ごたえを楽しめる、大好物の一つ・・・

じゅるり、と思い出すだけで口内が潤う。

「はっ、いかんいかん」

ほっぺたの肉をだぶんだぶん揺らしながら、首をぶんぶんと左右に振る。

ダイエットせねばならないのだ。学校が再開し、体育教師として皆を指導する立場になるのだから。

だから…だから・・・






それでもワグナスの決意空しく、次の日もフラー先生に美味しい店があると誘われ、断れず

その次の日も、マージベーカリーで新作の試食会があるから、という話を聞きふらふらと足を運び…体重は増加の一方を辿るのだった。




「あなたーもうお昼になるわよ〜」


「ん・・・んん・・・? も、もうそんな時間か!」


妻の呼ぶ声で、目を覚ます。もちろん上半身はすぐには起こせない。
昨日は我慢できずに夜食を2回も食べるために起きたせいで、睡眠時間がずれてしまったからか…それにしたって寝すぎだが。


「そういえば、今日はクジンシー先生が各地の担当者の家を訪問するって連絡があったわよ」

「教頭が?」

何の話だろうか、ある程度は予想はつくが…


私はドキドキしながら教頭の到着を待つことにした。
妻は呑気に、いつも通り。テレビを見たり、音楽を聴きながら、何かしら口に運んでいる。

…む、あの黒胡椒フライドチキンと蒲焼き風バクダンおにぎりはおいしそうだ、私も食べるとしよう。


しかし、この体型では流石に注意されるだろう。
気休めでもいいから少しでも誤魔化せないだろうか?

ワグナスは久々に全身に力を籠め、腕周りやどうしようもなく膨張したお腹を引き締めさせた。

「ふぐっ、むんっ・・・・!」


グググッと元のサイズがサイズだけに、意外と引き絞れた、ような気はする。
ウエスト2mぐらいは減って見えるんじゃないだろうか?

だが、これをずっと維持し続けるのはなかなかの苦行だ。

と、対策を考える暇もなくクジンシー先生がやって来る。
彼も以前に比べると丸みを帯びているが、この市内においてはスマートで通用するレベルだろう。ウエストは6mも無い気がする。

サポートメカにもあまり頼っていないようだ。少し前の自分を思い出すと現状が恥ずかしくなってくる。


「お邪魔しますぞ…と」

大聖堂のホールを思わせる高い天井の、広々としたリビング。
それでも窮屈さを覚えるほどに、アバロン夫妻は巨大に、ぶくぶくと、肥えていた。


「・・・ふぅ、ダンターグ先生、いくら相撲部の顧問とはいえ限度というものがあるでしょうに」

「はい…、すみません」

しかし彼女の両手にはそれぞれケサディーヤとトルティーヤが握られており、その態度には到底似つかわしくない。


「ゴホン! ワグナス先生もですよ」

「ハ、ハイ・・・」

「どうしました?不自然に力んでるというか、息苦しそうな声ですが」

不審そうにこちらに目を向けてくる。うむむ、バレてはいないのだろうか。

「ソ、ソンナゴドハ、ナイ・・・デス」


よくよく見れば全身がぶるぶると震えているのがわかるはずだが、特に気にせずクジンシーはクドクドとした説教モードを開始した。

「フラー先生などは、目に余る状態でしたよ、まったく・・・
かつては私のように、いえそれ以上に痩身で聡明な方だったというのに近頃の彼ときたら…」


そういえばフラー先生は日を追うごとに太っていると聞いたなぁ。
H3XLサイズの上着は袖を通さず肩にかけているだけだとか。(※ハイパーXLの略称。10XL以上はHXLとなる)


「…」

「きいていますかおふたりとも?」

「えっ?!あ、はい・・・(お腹空いたわぁ…クジンシー先生、こうなると話が長いのよねぇ)」
「モ、モチ、ロン」

「いいですか、教師たる者生徒の鑑となるべくあれこれくどくど」


「…フゥー・・・・フゥーー…!///」

い、息苦しいっ!!! 必死になってお腹をへこませ、ちからこぶを作る要領で四肢にも神経を使っているせいで、クジンシー先生の話はろくに頭に入ってこない。
ずっと息を止めているかのようで、次第にワグナスの顔が赤くなっていく。

「…というわけで、生徒たちだけでなく先生方にもある程度、今後は制限を設けようと思うのです。
ワグナス先生も、このお腹ではとても体育の指導などできんでしょう」

そういってクジンシーは軽くポンポンとこちらのお腹を叩いてくる。

「フグッ・・・・・・!!?」

無理やりに強張らせ、緊張していた肉体が、水風船を針でつつかれたようなその刺激によってとうとう限界を迎えた。

ダムの堰が決壊するように、
引き絞っていた弓の弦が解き放たれるように

ゥウ! と小さくワグナスが唸ったかと思うと、次の瞬間、彼の胴体はみるみる巨大化していった。

【ぶくっぶくっ、ぶくぅうう!!!!】

「はぶっ、ぅ・・・ぐっ・・・!!///」

体育教師とは名乗れない、みっともない姿を曝け出していく。(※元から、お腹をへこませててもダメな体型ではあったが)


ぽかんと口をあけ、クジンシー教頭は呆然と、その様子を見て…


ただでさえ超肥満体型で注意をしていたワグナスが、それ以上の体型だったことに気づき…


「ワ・・・・ワグナス先生!!!!!!!!」


ピシャーンと、雷が落ちた。隣にいる、彼の倍近い横幅のダンターグの事などもう目に入らない(彼女も約90t前後だが、筋肉量が違うため見た目よりは重くない(?)

「は、はいっ」

「仮にもあなたは肥満生徒に対して唯一指導ができる立場であったというのにその体たらくはいったい何ごとですか!!!
ここ数日の食生活、摂取した食糧、頼んだ出前、買った物のリストは全て提示してもらいますからね!!」


断る権利など、無かった。

ワグナスはいくら態度が縮こまっても変わらない体型を恨めしく思いながら、
その後クジンシーに新たな生活習慣の予定をまとめたリストを1時間かけて作成させられるのだった…。




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