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超密集地帯

11、〜レナスの午後〜


その世界のドラゴンは、酷く太っていた。


《陣術》という不思議な力。
そして古代のアーティファクトによって、発達した文明。

確立され…されすぎた食糧生産。

常に、視界には何かしら食べ物が配置されており、
外に出れば民家以外の建物の8割は飲食店というありさまだった。


残りは何かというと、ショッピングモール兼、店の合間合間にファミレスが完備されているような空間だった。



レナス「さてとぉ、今日の買出しの予定はぁっと」

間延びした口調で、コントロールパネルを操作し空中にウィンドウのメニューを開く。

晩御飯は、自分で作っている。とはいえ、キッチンで包丁を動かしたり、鍋を煮たり…
なんて芸当は出来ない。正直、誰も出来ない。

完全に機械と術任せなのだが、彼らにとっては材料の選別と味付けの設定、これが立派な《料理作り》になっているのだ。



1kg***の値段のお肉を、とりあえず200kgほど注文する。
健康的な彼は野菜も、大目に頼んだ。

総計で1t近い食材がこの後うちに配達されることになる。

レナス「もぐもぐもぐ・・・んんっとぉ、今日はこれぐらいでいいかなぁ〜〜うん」


浮遊台に乗ったジャンクフードやお菓子。手当たり次第にドーナッツやブルーベリーパイを口にしながら、帰路に就くレナス。

すでに《食事代》をチャージしているので、現金は手渡す必要も手間もない。


全身のたるんだ肉をひきずりながら家に着く。玄関はまるで輸送機を格納する扉のような広さだが、この世界の竜にとっては見慣れた玄関口。

大部分の家は球技用ドームのように広く、だが広い土地ゆえに毎回自由に改築・増築が出来ていた。


今日は友達も遊びに来る予定だ。

夕食の準備をしながら、来客の為の準備もするレナス。
とはいえ手元のパネルを少し操作するだけでほとんど自動的にあらゆるセッティングがなされていくのだが。



ファクト「ふぃ〜〜つかれたぁ・・・おぉっすーーー、おじゃましまぁぁあす」

レナス以上に間延びした声で最初にやってきたのは、ミドガルズオルム緑竜の同級生ファクト。

全身ブヨブヨで、巨大なスライムを彷彿とさせる体つきだが、アズライト竜学生にとってはありふれた体型である。

レナス「あ、いらっしゃぁあい」

ファクト「おぉーう、けっこうつかれたぞ〜
んんーー、なんだ、俺が一番最初なのか〜〜」

レナス「あはは、こーぷくんたちは、まだまだ遅くなるだろうからね〜」


待っている間、ケーキでも食べていようよ。
とレナスはティラミスやプティング、モンブランといった品々をずらりと両者の《腹テーブル》に運ばせた。

ファクト「んぉおっ、じゅるり・・・うまそうだなぁ、これ、人気店のやつじゃん!
全部食っちまって、いいのかー?」

レナス「うん、こーぷくんたちには悪いけど、数があんまり用意できなかったから、こっそり、たべちゃおう・・・ね?」

ちょっとだけ意地悪な笑みを浮かべるレナス。
とはいえ、コープやリガウならこんなケーキ、味わう間もなくペロリと食べきってしまうだろう。

あと、レナスも最近は食欲がじわりじわりと増えてきていた。

ファクト「ジュースとか、ハンバーガー、ここに配達するよう頼んでおいたぜ、そろそろくるとおもう」

レナス「そっか、ありがとぉ・・・むしゃむしゃむぐむぐ」

ファクト「しゅくだいとかは、これぜんぶ食ってからにすっかぁ〜〜がつがつがっふがっふ」



平均的な学生竜の彼らでも、床一面にだぶついた脚や太腿、腹肉…どれか分別のつかない肉という肉が広がりきっている。
それでも、部屋は彼らの肉体で埋め尽くされることは無い。

広く、高い部屋。

無人のフロートマシンが次々とチャイムを鳴らして、入って来る。

もし体脂肪率が《普通》の竜がいたとしたら。
50人前、否…それどころではない量を、《待ち時間のちょっとしたおやつ》として平らげた。

レナス「ぷふぅ、おいしいなぁ〜」

ファクト「がつがつがつ・・・んんーー・・・それにしでも、こーぷたち、おそいな。まぁた列車とか陥没させてんじゃねーのかぁ?」

レナス「あれは、たいへんだったよねぇ・・・」


あの日は、小さな隕石でも落ちたのかって思いたくなるようなクレーターが出来た。

けど脂肪まみれの彼は物理的な衝撃はほとんど来ないし、そもそも万が一に備えた列車の完璧な防御壁術が作動するから怪我のしようはないのだが。




レナス「・・・あれ、メールだぁ」

ファクト「こーぷたち、なんだって?」

レナス「ええっとぉ・・・”また重量オーバーで今度は違う事故が起きて、今日は行けそうにない、ごめん”だってぇ」

予想はしてたとはいえ、本当にそーゆー事態に陥っているとは…


レナス「まったくもぉ、こーぷくんたちのいる地域、ふとりすぎだよみんなもぐもぐ」

ファクト「むっしゃむっしゃ、だよなぁ、うっぷ、おれらぐらい、むぐむぐスタイル良くないと、せいかつもたいへんだってのに」


ぶよぶよだぶだぶの肉塊竜たちは、ケーキ食べちゃってて良かったねと。そういって笑い合う。


その後、いけなかったお詫びに・・・と
コープとリガウ、そしてオーエンたちから送られた品は、ベクタ産の高級フルーツ詰め合わせだった。

レナスはファクトと共に夕食を堪能し、買った食材、頼んだ食材、持ち込んだ食材、そして送られてきたデザート全てを平らげた。


レナス「んっ・・・んっくぅ・・・・///
だ、だべすぎ、ぢゃっだ、かな・・・えへへ・・・」

ファクト「くふぅーーーんぐ、がぁっ、ちきしょー、さすがに10回もお代わりすんじゃ、なかったかーーーうぷっ」

お腹がわずかに膨れているレナスとファクト。 だぶついた脂肪まみれの肉体で、シルエットが若干変わるという事は、つまりそれだけの量を腹に収めてしまったという事だ。



また、体重増えちゃう・・・かな。

レナスはちょっとだけ食べ過ぎたことを反省しながらも、



ダイエットが必要な体型じゃないよね。と、呑気に食後の紅茶を飲むのだった。



レナス 約120t

ファクト 約128t




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