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超密集地帯

17、〜超密集海水浴場〜


海。


海は本当に広い。どこまでも続く水平線。端から端までが海水で。

レナス「不思議ですよね、海って…」

コープ「ふぇ?なにがぁ?」

レナス「もー、コープ君、折角今日は海に来たのに…食べてばっかりで」


コープ「えええー海に来たら、【海の家】の出店を楽しまなくっちゃあ、だよね?」

リガウ「だよな〜〜むしゃむしゃ」

オーエン「あ、この明太子風焼きそば美味し…えっ、ごめん、聞いてなかった!」

ぶよぶよの肉塊トリオは、器用にサポートメカに餌付けして貰っている…もといご飯を食べさせて貰っていた。

すでにVerが28回もアップデートされているサポートメカは一般竜に普及しているものですら、潮風にさらされても、海水に濡れてもバッチリだ。


ちなみにナイルが使用している最上級ランクになると、たった1基でも10匹の肉塊竜を同時に補助・生活保護が可能な一品で
それをたったひとり…自分専用として利用している事から、彼の並はずれた【自堕落】【暴飲暴食】っぷりが伺える。
更に万が一に備え同様の最上級サポートメカを複数常駐させているのだから…これだから富豪は、と言いたくなる。


レナスは溜息を吐きつつ、ごくりと唾をのむ。
さすが食いしん坊トリオ、数百軒もたっている【海の家】からおいしそうなものを選んでいた。

普通、こういったところの露店商品というのは質が落ちてたり、ぼったくりの値段だったりするが、
ここドラゴルーナではそんな事は無かった。

むしろサービスとでも言わんばかりの低価格、大ボリューム。
運動不足な住民を外出させ、海水浴場やその周辺を活気づけるためという事で国から補助も出ており、格安で激盛り商品をいくらでも食べれるのだ。

経済効果が見込める、という事でますます海水浴場は活気づき…
今ではわざわざ今の時期にしか味わえない特産品や料理を味わおうと、よその国からくる場合もあるぐらいだ。





レナス「もー、みんな今日は泳ぎに来たん・・・で、しょ・・・って、あれ?」

自分で言ってて違和感を覚える。僕らって、満足に泳げたっけ?

う、浮く事なら何とか出来るかなぁ…


リガウ「いーんだよ、海なんてのはその場の雰囲気を楽しめさえすればモグモグ」

コープ「このフランクフルトすっごいおいしい!レナスも食べなよ〜」

オーエン「まぐむぐ・・・あっ、ご、ごめんレナスなんて言ってたの?」


レナス「はぁ、もういいよ…ファクト君向こうで一緒に泳ぎましょう」

ファクト「へ? あー、俺もパスかなぁ。
潮風のある浜辺におけるサポートメカの耐久と陣術の影響の調整とか気になるし…もぐもぐ、それに、食いながらは、泳げないだろ」


花より団子、海より露店。
彼らは食べ物にしか本当に興味がないようだった。

そんな皆に触発されてか、レナスもぐぅとお腹が鳴り始めてる。
意識して我慢してたんだけどな…

レナス「…じゃ、じゃあボクもちょっとだけ食べてから行こうかな」

ずりずりと肉を引きずりながらの移動。それだけで砂は大きく隆起して地盤の変動が起きたかのような錯覚に陥る。




暑い日差し。少ししょっぱい波打ち際。

パラソル代わりに太陽光遮断フィルターを頭上に張り、チューチューとドリンクを飲みつづけ
乾いた体にフラッペをかっこんでいく。

「くぅー、キーンってきた」

「海で食べるかき氷って本当おいしいよね〜〜」

しかしただの氷ではない。たっぷりカロリーを含んだ氷菓である。それに器一杯のシロップをかけ、練乳を垂らし、フルーツを盛り合わせ…

1杯1万キロカロリーはくだらないそれを、ペロリと平らげていく。


「わざわざ海に来て…これで、いいのかなぁ」


暑い日差しを受けながら、レナスは考える。

折角だから、少し泳いでこよう。そう考え、レナスは海へ向かう。


「おい、しょ、ん・・・しょ」


ざぶ、ざぶと波打ち際までようやくやって来る。
サポートメカをフル稼働させており、砂地でも足を取られることなく、埋まることなく無事に来れた。

プールとは違い、不規則な波。

「よい、しょ」

ゆっくりと海に入って行く。海中は、浮力が働くおかげで大分楽になった。

たゆたいながら、余った贅肉が波に揺られてだぶんだぶんと動き続ける。

クロールも背泳ぎも、犬かきすら、今のレナスには当然ながら無理だった。
ただ、浮いている。それだけでも、彼にとっては大変な事なのだ。

レナス「水泳はダイエットにもいいから、みんなも来ればいいのに…
『僕はまだ太ってないから、そんなに意味が無いし』」

さらっととんでもない発言をするレナスだが、実際平均体重で考えると彼は太ってはいない。
あくまで平均で…だが。


10分ほど浮いていただろうか、ちょっと休憩しよう…と戻ってくると、先生たちの姿もあった。

「あ、アネイル先生たちだ」

竜だかりが出来ているが、肉塊竜が密集してると凄い迫力だ。

口々に、可愛いな…む、胸がデカい…なんてひそひそ話が聞こえてくる。

去年とは違う水着に身を包んだ(?)アネイルとロックブーケ。
胸のあたりは特にはちきれそうになっており、太ったおかげでまた大きくなったんだなぁ…と理解できた。


「やれやれ、折角海に来たのにこれじゃなかなか泳ぎにいけないわね」

「ふふ、そう言いながらフランクフルトを食べて…まだまだ行く気ないみたいだけどね」

「しょ、しょうがないじゃない!/// そういうアネイル先生だって、焼きそばのメガ盛り、3パックめでしょ」

それもそうね、とほほ笑む彼女たちはこの贅肉だらけの暑っ苦しい空間の絵面にとっては非常に癒される光景で…

とはいえ彼女らも立派な、立派過ぎる肉塊。



わずか数百メートル四方に、総計数千トンもの肉が溢れかえっている様は、なかなかに迫力があった。

そんな彼女たちの後方の海の家で…
のんびりとイカ焼きを食べ続けているのはワグナスとフラーだった。

講師の巡回の日で、何かあった時の対処として海に来ていた。


「うーむ、しかしアネイル先生も、ロックブーケ先生も、また派手な水着ですな…」

「そ、そうですね」

食べる手は休めず、ガンガンにクーラーがきいた店内で食べて、食べて、食べ続けた。

「そういえば、ダンターグ先生は?」

「ああ妻は…ダンターグ先生はこれほどの遠出となると、少々面倒だと…
はぁ、また長期休暇が終わって家から出られなくなったらどうするつもりなのか」

「ハハハ…
なんとか、連れ歩かないと、その光景が目に浮かびますな」


とはいえ、最近はどれだけ太っても家の壁が自動的に展開する改築をしているので、
どの家の肉塊竜も安心してぽんと軽く倍近く肥れる時代になった。

ひたすらデブ竜のため、肥満竜のため、肉塊竜の為に特化・整備された環境。

その状況にみんなは甘えつづけた。


ロックブーケ「そうだ、ビーチボール持ってきたのよ、一緒にどう?」

アネイル「ええ、いいですよ」

ロックブーケ「それじゃ、こっちからいくわよ。そーれっ」


えいっ、やぁっとかけ声を出しながら、ビーチボールをポンポンと受け続ける両者。

だが、当然ながらふたりは機敏な動作は全くできない。
手元のコントロールパネルを操作し、浮遊しているサポートメカの低反重力機能を利用しまるでラケット代わりにしていたのだ。

その場から一歩も動かず、指だけを動かす。
それでも神経を集中する作業なので、彼女たちは思いっきり体を動かして運動した、という疑似体験が出来た。

もちろん、消費カロリーはゼロどころか大幅に−…というか、摂取カロリーの方が何倍も多い。
それもそのはず、サポートメカ3台のうち2台は飲み物と食べ物をひたすら口の中に運び続けているのだから。


「うぷっ、はぁはぁ、熱中したら、ちょっと、だべずぎ、じゃったかしら」

「わ、わたしもぉ・・・」

設定を全自動にしていたせいか、お腹が妙にキツイ。傍目にはぶよぶよでだぶだぶのだらしない体躯は変わっていないが、
膨満感が凄く、彼女らは汗を拭いてもらいながら冷房完備の海の家へ戻っていく。



===




シュメルツ「うぷっ、さーって、たっぷり堪能したことだし…そろそろ泳ぐかぁ」

ずずっ、ぶにゅっとどこに肉がどのようについているのか判別つかない体で、海へ向かうシュメルツ。
そのシルエットはさながら肉怪獣といったところだ。


『ピピピ、警告。警告。現在の体重での海中への進行は、十分なサポートが、保障、出来ません』

シュメルツ「ぬぉっ、なんだなんだ?」

リガウ「あははっ先輩ってばいくらなんでも太りすぎ〜〜」

シュメルツ「あちゃ〜〜500tまで大丈夫って言ってたのによぉ〜」

オーエン「えっ、それじゃシュメルツ先輩って短期間でまた10t以上太ったんですか?」

シュメルツ「そーみたいだなぁ・・・くそー悔しいから俺はずっと海の家にこもるっ!!」


レナス「僕の5倍以上かぁ…凄いなぁ」

簡単に5倍、とはいうがそれが全部余計な贅肉だけで補われている、という事を考えるとシュメルツの体脂肪率はどうなっているのか。
そう思わずにはいられなかった。

リガウ「そのうちナイルさんみたいになりそうだよな」

オーエン「あ、そういえばナイルさんだけど、先日試しにサポートメカを更に数台増やして試しに生活してたら
20肉塊竜前以上のご馳走を食べる羽目になって、お腹が凄い事になってたよね」

リガウ「あーその記事見た見た、ワグナス先生みたいだよなw」







ワグナス「っくしゅん! ン…かき氷食べ過ぎたかな?」

フラー「いやいや、実際食べ過ぎですよ。パネル操作できないぐらい、ギッチギチですよ?」

ワグナス「ぬぉっ?!き、気付かなかった…」

全自動設定で焼き飯をひたすら口に運んでもらっていたワグナスはパンパンに膨れ、腕や足が自分の腹に押され食い込むレベルに『膨張』していた。
体型維持設定を8段階も高く設定している弊害だろう。なんとも、間抜けな姿だが、
それでもある意味引き締まって(?)いるようには見える。

そして、そのツッコミを入れるフラーは彼よりも確実にデブであった…。






生徒、教師共に海を堪能した…
というより、海辺沿いならではの幸を堪能した。

たっぷり泳いだ(?)後は近くの旅館で海鮮丼や、かき揚げフライ、刺身、海鮮スープ


一つのテーブルを埋め尽くすほどの豪勢な船盛り。

どれも皿から溢れており、旬の鮮魚・魚貝類をふんだんに盛り込んだ一品はどれも美味しく

どうにも、やめられない。
さっぱりとしたぽん酢につけたり、わさび醤油と一緒にトロッとした赤身を口に入れる。

教師陣はお酒もたしなんでおり、顔が紅潮するのに比例して次第に食べる量、ペースが乱れてきた。

フラー「ヒック…いやあ、しかし、こうしてのんびりと休暇を楽しむのも、いいものですなぁ」

アネイル「そうですねぇ、あ、フラー先生5皿ほど空になってますね、追加頼んでおきます」

フラー「もぐもぐ、おぉ、すいませんね〜うぷっ、このお酒も美味しいなぁ、体の中から温まりますよ」

ロックブーケ「そんな風に早いペースで飲み食いして大丈夫なんですか?」

ロックブーケは目を細めていたずらっぽく笑う。この面子の中で、一番太るペースが速いのがフラーなのだ。
既に450tを超えており、気軽に体重を量れないから気づいていないがシュメルツとほぼ同レベルだ。


海に一歩も向かおうとしなかったから、フラーは自分がまだ500t未満だと思い込んでいる。…が、実際はそうではなかった。




彼らの体脂肪率は凄まじいとはいえ、その体を維持するためには多大な水分も必要だ。
そういった意味では次々とビール瓶を開けて飲みつづけるのも、仕方のない事なのかもしれない…
が、その日は少しばかり飲み過ぎた。


「う〜〜ん、あねいるせんせぇ、おつまみ他にないですかぁ」

すでに泥酔コースまっしぐらなフラーは顔面を真っ赤にして、てきとーにサポートメカのコントロールパネルを操作していた。
目に入る料理は全部口の中へ。もごもごと動かしながら、再びジョッキでビールを飲んでいく。

「えぷっ、ふぃぃ〜〜きょうはいちにち、つかれて、もうくたくたですよぉろっくぶーけせんせい」

「ほらほらぁわぐなすせんせいも、はしがとまってますよ〜
あ、箸はわたしたちつかってませんでしたねー」


あははは、と変にテンションが高くなったフラーは止まらない。
アスターゼ草と唐辛子を乾燥させた薬味をパッパッといろんな料理にふりかけ、10kg分のいくらを乗せた酢飯をガツガツと平らげる。

「っぷふぅーー、んまいなぁ〜〜…ヒック///
わぐなすせんせい、もっとたべないとだめですよぉ〜」

てきとうにサポートメカにコマンドを入力して、パツパツのお腹を摩って休んでいたワグナス先生にも
たっぷりとアスターゼ草入りの鯛茶漬けを半ば無理やりご馳走していく

「ふ、フラー先生、待ってください、私も、もう、お腹いっぱい、で、げぇっふ!!!;
あぐ、ぅう、だんだん、もう少し、食べたくなって・・・ふぅ、ふぅうっ」


酔いと、新たに生まれてくる食欲に体を任せ、両者は旅館の在庫が無くなりそうな勢いで食べ勧めていく。

…実際は、ベクタ在住の竜の団体にも対応できるから在庫は無くなる事は無い。
ゆえに、彼らが限界を迎えるまでご馳走の嵐はやむことはなかったのだ。

途中で目が覚めたアネイルたちも絡み酒状態になったフラーに巻き込まれ

ようやく眠りについたのは朝日が昇りきってからであった・・・


フラー「ぐっ、ぅぁ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」

普段の何倍も速い呼吸で、苦しそうに悶えるフラー。これまでで食べたことのない量がお腹の中に入っており、
重度肉塊ボディの一部が不自然に盛り上がっている。
苦しさで目が覚めたが、満足にしゃべるのもおっくうなぐらい苦しい。

隣で仰向けに寝込むワグナス先生も同様で、あれほどパンパンだったお腹は再び限界を超えてしまったのだろう、周囲の肉塊竜と同様に形を失っており、
酷く情けないだぶんだぶんのデブに変わり果てていた。

息苦しそうに悶えるアネイル先生とロックブーケ先生は、浴衣がはだけ艶のある肌でなんだか、ちょっと目線が向くけど凝視するのも気が引ける…そんな感じだった。

浴衣がはだけて…とはいうものの、そもそも肉塊竜は着るのではなく肩にかけるマフラー程度の意味しか持っていないから、実際はそんなに変わらないわけだが。

あぁ、それにしても、苦しいし、頭もガンガンするし、体も妙に重い、お腹も、なんだか今にもはち切れてしまいそうだ…

フラー「ふぐぅっ、ぐっ、うっ、ぅうっ・・・;///」





結局、海をまともに堪能しなかったフラーは海の幸だけを山盛り堪能し
自信の体を山のように盛り上がらせ… 余裕で500tオーバーの更にひとまわり巨大な肉塊竜へと変貌するのだった…



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