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超密集地帯

27、〜超絶アネイルのリバウンド(前編)




〜決意の女竜教師〜



どうしよう……流石に、短期間で太りすぎちゃった、よね?



アズライト竜学の美竜巨乳教師。その体重は実に2万8千トン。


この数値は現在のニュー・メガフロート内の竜達の中でも上位に食い込む超超超肥満だ。


複数台のサポートメカに補助を受けつつ、肉塊竜の中でもとくに《地面の支配面積》は大きい。


パーソナルハウス(個人用家屋)での生活も慣れたもので、ほぼ全自動で出来立ての料理が、シェルプラント産の食材で作られる。


食後のデザートに超カロリーのデーツホイップクリームをふんだんに盛りつけた、

フルーツミックスのケーキを20ホールも平らげる癖がついてるから、それも影響あるかもしれない



この地方で、自分が太ったかな? と認識に至るには《相当太ってる》必要があるのだが……

言い換えればアネイルもそのレベルに達していたという事だ。


なにせ、隣にいる竜とのボリュームがひとまわりも、ふたまわりも違う。

ちょっと移動するだけでぶよぶよの体は周囲に被さりつつ、微動だにしない時は相手の肉塊竜が左右にどくほど。




従来の機能を強化した大型のサポーター(HS)が運ぶ料理の量も回数も、自分の方が多かった。


ぶっくぶくに太っていた印象のダンターグ先生も、気付けば追い越していたし……



「そろそろ、本格的にダイエットしないとね……」


もぐもぐ、むしゃむしゃと、呼吸するぐらい自然に莫大なカロリーを摂取しながらアネイルは決意する。

……とりあえずダイエットする前に、思いっきり好物のスイーツは全部、3回ずつ食べておかないとね。



結局アネイルがダイエット開始したのは追加で280tほど太り、一段階ヒュージサポーターの設定をあげてからだった……





〜甘いものには目が無くて〜





「ふぅーー、はぁ、ふぅ、っくうぅ……」


ずずずず、ずず……と巨大な山が移動している。正確には山ではなく、たったひとりの竜、しかも女性なのだが。

「おっとと?」「あ、ごめんぼくら邪魔だったかな〜」

「す、ずみまぜん、どおり、まず(通ります)……」

肉塊竜と肉塊竜の横を、なんとか過ぎて広い空間に出る。


今、アネイルは運動量と消費カロリーを増やすため、ヒュージサポーターの補助レベルを落としていた。

久々に覚える息切れ感と、補正の少ない野太い自分の声にちょっと驚く。

(もっとも、これでも並の肥満生徒以上の補助を受けているのだが)


歩くだけで、こんなに大変だったっけ……

「っぷはぁ、ちょっと、休憩しなきゃ、駄目かな……」



スキャナーに計測させ、現在の体重を表示させてみる。

緑色のレーザーが全身を通り過ぎ、しばらく時間が経つと、ウィンドウに5桁の数値。

もっとも《t:トン》での表記で無ければ桁数はもっと増えるのだが。




2万8350t。 体重増加のペースはなんとか抑えているけど、なかなか減らすまで至らなかった。


ダイエット向けの記事を色々読んで、選ぶスイーツの種類も限定してるんだけどな。

「ふぅ、ふぅ、はぁ、ふぅー……」

ソフトクリームを食べつつクッキー&クリームのシェイクをごぶごぶ飲み干し、体力が回復したのを確認すると


再び《歩行ダイエット(ほふく移動だが)》を再開。

だが久々にこれだけ移動(肉塊竜の中では) していると、いろいろなものが目について、ついつい注文してしまう。

ドライブスルーよろしく店内に入ることはできないので、チョコフレンチドーナツやキャラメル&チーズのチュロス。


何十個、何百個と買って食べてしまう。オートで普段の食事も与えられながら、自分でもさまざんな嗜好品を取り寄せて食べ……


これで痩せるはずがなかった。


2万9000tオーバーを知らせる通知がポン、とポップアップする。

「……あ、あれ? ふう、はぁ、おかしいな……ダイエッド、もう開始じでるんだけど……;」


流石に3万トンという大台にリーチがかかると、アネイルも少し焦ってしまう。


けど、おいしそうなキャラメリゼされたクリームブリュレのクレープとか見せられたらついつい……


「あ、あの、追加で3つ……ください……」


ぶよぶよのあごとほっぺたを揺らしながら、追加で注文をしてしまうアネイルだった……。



===





〜ダイエットの先生〜




アネイルの痩せたいと思う気持ちとは裏腹に、ダイエットは全く成功しなかった。


増える一方で、ここ数日は数値を見ないようにしている。


「うーん、やっぱり食事制限をしたいところなんだけど」


むしゃむしゃもぐもぐむしゃもぐ

12種類もの超巨大プリンを食べ比べながら言う台詞ではないが、

今の彼女にとっては呼吸と飲食は無意識レベルに行う動作であり


”ご飯の時間”は、それこそ莫大な量を平らげることになっていた(圧縮食材を利用して、その巨体を維持している)


それこそ現在のレナスがもう食べれない……とギブアップする量を。


いや、それだけではない。現在のアネイルが食べる量は、

コープやリガウですらお腹限界でもう駄目だよ、と訴える程の量に増えていたのだ!!


リガウのように意図的に太ったわけではない、天然肥満の末恐ろしさ。


「お、アネイルじゃん。直接会うのは久しぶりだねー」


そんなスイーツ満喫中の彼女の前に現れたのは、同僚であり親友(?)でもあるロックブーケだ。


「え、凄いロックブーケちゃん、ここまで歩いてきたの?」


「ま〜たまには動きまくらないとね〜……ってか、あんた通信だと顔しか見えてなかったけど……
一段とでかくなってるわね」

「や、やっぱりそう思う?」

「だって見上げるレベルだもん……ま、あんたがぶくぶく太ってくれればライバルは減るけどね〜」


とはいえ肉塊竜しかいない空間では、体形のメリハリが存在しないので、モテ具合は、ほぼ肌の艶とか顔で決まると言っていいが。

逆にいえば、余計に胸が大きく見えるアネイルも近くを通る異性は顔を赤くしてちらちら見ることがよくあった。


「ダイエットしたいと思ってるんだけど……なかなか減らなくて;」


「その体見れば、うまくいってないのはわかるけど……
それならワグナス先生にダイエットのコツとか、運動の仕方教えてもらえばいいんじゃない?」


そういえば、ワグナス先生は奥さんであるダンターグ先生が身動き取れない程太った時(強力な効果を持つサポートメカが普及していなかったため)

ダイエットを手伝って復帰させた実績もあるし、生徒たちの肥満問題にも取り込んでいるよね。(成功しているとは言っていない)


「そっかぁ、うん、そうだね。独学でやっても、駄目だったかもしれない。
明日、ワグナス先生のところに行ってみる」

「体壊さない程度に頑張んなさいよ、それじゃあたし行きたいお店があったからこの辺で」

「またねロックブーケちゃん」


そして、ロックブーケと別れるとアネイルは運動するダイエットを始める決意をした。


……とりあえず明日から。




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