超密集地帯
31、〜超絶肉塊竜達の宴〜
ドラゴルーナという衛星には、数多くの竜が住んでいる。
大地を埋め尽くさんばかりに、ひしめきあい、生活している。
それほど多くない個体数で、何故台地がそこまで埋め尽くされているのか。
彼らの肉量の多さを物語っていた……
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「ふぅう、ふう、ふぅう、ふぅ、ぐぶっ、もぐ、もご、もぐ……くふぅ、ふぅ、ふっ」
不自然なリズムで呼吸を繰り返し、疲労困憊の竜。
体育教師のワグナス=アバロンは太り過ぎゆえの自重に苦しんでいた。
体重は測っていないため定かではないが、本来の体型・重量からは大きく逸脱しており
もはや原形すらとどめていない始末だった。
巨大すぎる腹部も、詰め込み過ぎた食料を消化したり、体型維持装置のキャパシティを越えればすぐさま肉の海で大地が埋め尽くされる。
そんな彼が、全くいう権利を無い発言を、近くにいる妻に発していた。
「はふぅ、ふぅ、ダンターグ、いい加減、ダイエット、しないか?
さすがに、通信教育にすら、弊害が出るのは、まずい、と、思う、ん、だが……ふぅ、はぁ」
どの口がダイエットと言うか。
だが、そんなワグナス(巨大な肉饅頭)の前に立ちはだかるように存在するのが妻のダンターグだった。
彼女は自動機械が繰り出す多種多様な料理を絶えず飲み込み、絶品スイーツを20,30、40個と恐るべき速度で平らげていく。
そんな、尋常ならざる、まるで”食べるためだけに存在する”と言っても言い過ぎではない超絶肥満肉塊竜の彼女は(おそらく)不満そうに顔をしかめた。
「そんな、こと、いったて、ねぇ、これでも、ふぅ、はぁ、ふぅ、すっごく、がまんしてるんです、から、ね?」
言い返しながら、口は喋るより食すための動きの方が圧倒的に多い。
やれやれと思いながらも、ワグナス自身、耐え難い食欲の辛さは身をもって知っていた。
「にしたって、ふぅ、教師も、生徒も、通信教育すら、”肥満休み”が目立つようになって…」
様々な補助装置を用いて会話をする彼ら。
そうでもしなければ、自重すら満足に支えられないデブ共は会話すら成り立たなくなるのだ。
そのうえ……
ダンターグがおいしそ〜〜〜にいろんなものを食べ続ける姿を見せつけられ、
ワグナスの腹部からも巨大すぎる空腹音が鳴り響く。……のはワグナスの錯覚で、すでに【通常肉塊竜3人前】をきっちり食べきってカロリー超過している。
だが、我慢できない。食べたい、食べなくては……
そんな変な強迫観念じみた食欲に突き動かされ、とうとう不動の精神を持つ彼ですら
その純粋な、身の内から沸き起こる”食欲”に身をゆだねた。
「っぐぶぅ、がぶっ、ごぶっ、がつがつがつ、もぐむしゃがつがつもぐむしゃ」
「はむ、あ〜〜ん、あぐっ、ん〜おいしい、もっと、おかわり、しなきゃ」
「ふぅ、っふぅう、だから、たべすぎるなと、うぅっ、だが、わ、わたしも、あと3枚…いや10枚追加で……ぐぷっ」
流れ作業のように、大量の、莫大な、異常な、山盛りの
パスタ、チーズフォンデュの野菜、ハンバーグ、炒め物……
まだ、食べたい、もっと、食べたい。
それが今の彼らの素直な感情であり、行動であり
「あ、あなだ、だべずぎ、よ、ま、また、おなかが、くいこん、で、く、くるしっ、はぁ、はぁ」
「そ、そっちの、ほうが、はひ、ふうぅ、ひぃ、2倍も、幅、とってるじゃ、ないか、ぐぷっ、うぷっ、げぇふっ、ううう!!」
結果として、その夫婦が太らぬ日は一日たりとも無いのだった……
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